微積物理 はじめに
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「微積物理」── もともと、そのような分野は高校でも大学でも存在しない。文部科学省のお達しで、高校課程では微積分を使わずに物理を教えることになっていたが、一部の予備校や参考書では微積分を前面に出して問題を解いてみせ、それがこれまた一部の受験生を熱狂させ、虜(とりこ)にしていた。 いつしか、微積分を用いる物理の解法が、受験生の間では「微積物理」と呼ばれるようになったらしい。 それぞれの主張は、高校側は「物理の本質は数学ではない、数学で微積分の準備ができていない段階で物理の授業に微積分を持ち込めば、数学嫌いの生徒は確実に物理も嫌いになる」、予備校側はガリレオの言葉に倣い、「自然は数学という言葉で書かれている」。 理系の生徒、学生にとってどちらがよかったかは明らかだろう。 自分は高校での物理の授業は暗記科目のように思えて、全然楽しくなかった。結果、あえなく浪人。 予備校の物理の授業は週に2コマしかなかったが、最高だった。 僕の物理好きは、高校でも大学でもなく、浪人時代の週2コマで培われたといっても過言ではないと思う。 いやー、物理はカッコイイから。 そして、このサイトは、 「好きで理系を選択したけど、点数取れないし、果たしてこれでよかったのかな?」と悩んでいる高校生、受験生に、 「やっぱり、理系だよね、だってカックイイもん。」と思ってもらえるために作られました。 本カテゴリの目標は、ニュートンの運動方程式から各保存則が自然に導き出されることを示すことにあります。話を進めていきながら、下のチャートにある空欄を順に埋めていき、運動方程式に、どのような作用を施し、どのような条件の時に各保存則が成り立つかを明確にすることで、力学の全体像が浮かび上がってくるように説明しています。 運動方程式運動量保存則角運動量保存則力学的エネルギー保存則 全体の構成は、力学成立までの歴史的流れを概観した後、必要となる数学を説明して道具立てを整えてから、各保存則の説明に入ります。また、各セクションで「余談」と 断っている個所は、高校の範囲を超える部分です。理解できなくても、先に進んで大丈夫です。この先、大学で出会うこととの関連付けのために書きました。 数学に自信のある人、時間のない人はいきなり保存則のページから入ってもらって、足りないと思ったら「道具としての数学」のページを参照してもらっても結構です。そこで土台となるイメージは結構素朴なものですが、差し当たり、大学・大学院で工学をやる上では、この程度のもので困ったということはありませんでした。というよりむしろ、イメージを持つことの方が大切ではないかと思うのです。もちろん、厳密な証明は別にあり、一度は通る必要があるが、腑に落ちるのはこうした素朴な描像の方だったりするので、証明の後はそのイメージを使って進んでいくほうが全体の見通しがよいものです。 そんな訳で、高校における数学の知識ゼロの前提で、最短距離で運動方程式から保存則の説明を試みてみました。 また、12. 落穂拾い ━━ 微積物理まとめ で話は完結ですが、後に続く Topics では、それぞれ独立したチャプターとして、高校時代、自分がよく分かっていなかったこと、ちゃんと説明してほしかったと感じたことを項目ごとにまとめています。
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