解析力学 はじめに


微積物理 では、 Newton の運動方程式から各保存則が導かれることを示した。そこでは現在の位置、速度の情報が初期条件として与えられると、少し先の未来が分かる、という描像だった。 自然を記述する方法には実は全く別のアプローチがある。境界条件として、始点と終点、それぞれの時刻と位置を指定してやると、その間の経路が決まってしまうというものである。その決定には最小作用の原理を用いる。具体的には経路に沿って、作用(積分)と名づけられた、ある物理量を時間積分した値が、最小値(停留値)をとるような経路を要求すると、それが実際に物体のとる経路となる、というのである。それはまるで物体が予め可能な経路を全て把握した上で条件を満たす唯一つの解を選んでいるように見え、非常に神秘的に思える。 我々人間には、近似法以外に各経路を一つ一つ検証して作用(積分)が最小となるものを見つけるのは困難なので、変分法を用いて、微分方程式に書き直すことを行わざるを得ない。その結果得られるのが、Lagrange 形式と Hamilton 形式である。 両者は Legendre 変換で結ばれており、対等だが、変数変換できる範囲が異なる。 Lagrange 形式からは、本チャプターで一番お話したい、Noether の定理で対象の系における時空の対称性と保存則の美しい関係を示し、 Hamilton 形式からは、Poisson 括弧式で物理量の時間発展と、古典力学から量子力学への橋渡しとなった量子化について、説明する予定です。 なんだか、「はじめに」が「まとめ」になってしまいましたが、それも予定調和の最小作用の原理ということで。

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