ここで、Einstein の規約に従って、同じ添え字が上下に出現した場合は、その添え字について和を取るものとする。新変数の空間における座標を(vi,aj),これに対応して、そこでの場 G(vi,aj)を、G(vi,aj)≡uivi-F(ui,aj)と定義してやる。 G が(vi,aj)の関数という意味は、先ほどの、新変数についての n 個の方程式vi≡∂F
∂ui, i=1...nから、n 個の ujを逆に解いて、 G の右辺にある ujを全て viで置き換えるということだが、このように定義した G の独立変数を、確かに(vi,aj)とみなすことができるということは、G の全微分を取ってみれば分かる。逆に解いた uiを、ui≡𝜓i(vj)としてG(vi,aj)=𝜓i(vj)vi-F(𝜓i(vj),aj)の全微分を取ると、
dG
=𝜓i(vj)dvi+vid𝜓i-∂F
∂𝜓id𝜓i-∂F
∂aidai
=𝜓i(vj)dvi+(vi-∂F
∂𝜓i)d𝜓i-∂F
∂aidai
=𝜓i(vj)dvi-∂F
∂aidai
=uidvi-∂F
∂aidai
≡∂G
∂vidvi+∂G
∂aidai
d𝜓i はさらに dvi で展開できるが、ここでは必要なかったのでこのままにしておいた。こうして、G は(vi,aj)上の関数、(vi,aj)空間の場となっていることが確かめられた。また、3 行目と 4 行目を比べることにより、旧変数 uiは、新変数の空間における場 G を用いて、ui=∂G
∂viで与えられることが分かる。系について、(vi,aj)空間で G の変化を追った後、(ui,aj)空間での F に戻る作業は同じようにしてできる。つまり、今度は(vi,aj)空間で G が先に与えられたものと考えると、(vi,aj)→(ui,aj)への逆変換は、先ほどの式で F と G をそれぞれ移項した形F(ui,aj)≡uivi-G(vi,aj)としてやり、同じようにui≡∂G
∂viと定義してやればよい。ここでも、ui の定義から逆に解いた vi を、今度は vi(uj) と略記することにして、F(ui,aj)≡uivi(uj)-G(vi(uj),aj)に対し、全微分を取ると、
dF
=dui vi(uj)+uidvi-∂G
∂vidvi-∂G
∂aidai
=dui vi(uj)-∂G
∂aidai+(ui-∂G
∂vi)dvi
=vidui-∂G
∂aidai
≡∂F
∂uidui+∂F
∂aidai
となるから、確かに F は(ui,aj)が独立変数となっている。F(ui,aj)(と F の uiによる偏微分)だけから G が定義されたように、G(vi,aj)(と G の vi による偏微分)だけから F が再現されたことに注目してほしい。因みに変換を受けない daiの係数を比較することで、∂F
∂ai=-∂G
∂aiの関係がある。新旧、両変数の、一方から他方への変換が、同じ形で表現され、対称性が著しい。これを Legendre の(二重)変換と言い、変換を受ける ui,viを能動変数、変換を受けない ajを受動変数と呼ぶ。両方向への変換が可能だから、当初の目的通り、(ui,aj)空間での場 F の変化を考える代わりに、より都合の良い (vi,aj)空間での場 G の変化を追えばよいということになる。両者は同等である。dF と dGを比較してみると、
dF
=vi dui+∂F
∂aidai
dG
=ui dvi+∂G
∂aidai
となるので、Legendre 変換とは、微分形式 1-form の、基底の変数と、その微係数を入れ替える変換である、ということもできる。また、符号を逆転して G の定義することもできる。これは本質的なことではない。G'≡F(ui,aj)-uiviとしてもvi≡∂F
∂ui∂ujuiuj>0 が成り立つこと。このとき、「 A は正定値である」という。・ A の全ての固有値が正であること。強単調であるためには、上に凸か、下に凸であればよいので、特性関数 F または -F がこの条件を満たせばよいということになる。この先、解析力学のカテゴリでは特に断りがない限り、この条件が満たされているものとして議論を進める。解析力学において、Legendre 変換は、速度配位空間における Lagrangian L から、相空間における Hamiltonian H の導出と、正準変換の場面で、重要な役割を果たす。最後に、特性関数 F が強単調ならば、変換先の特性関数 G も新変数に関して凸性が保持され、逆変換も保証されることを確認しておこう。そのためには、この先、あまり使われることもないが、微小変位ベクトルの成分が、変換によってどう写像されるかを先ず考える( u 空間上の近傍の 2 点は、Legendre 変換でやはり、v 空間上の近傍の 2 点に変換されるので、それぞれ、微小変位ベクトルを定義することができる。この両者の間の変換を考えるということ)。ここでは受動変数 ai はパラメータ扱いとして固定する。Legendre(順)変換における定義vi≡∂F(uj,ak)
∂uiから、u 空間上の微小変位 ( Δuj) は変換により、対応する v 空間上の微小変位( Δvi)=(∂2F
となり、これは変換先の特性関数(の -1 倍) -G となっている。任意の接点 P に対してこれが成り立つので、接点 P を動かしたときの関数としての w-切片を、添え字 |P を落として -G(ui,vj,ak) とすると、これが vj のみの関数 G(vj,ak) となることは先にみた通りであるが、与えられた特性関数 F のもと、接平面の法線 (∇F,-1) を決めると、対応する接平面の w-切片が一意に決まる、と考えると G が vj (と受動変数 ak )のみの関数となるのは自然なことが分かるだろう。こうして、ui から特性関数 F の grad にあたる vi へ変数変換を行うと、対応する特性関数は、その接平面の切片となることが分かった。数値的な具体例として、F(u1,u2)=1
2=-F(1,1) で与えられる。また、図の下部に(vi) 空間における等 G 線及び位置ベクトル v|P=(v1,v2)|P=(1,2) と、傾き ∇F|P=(u1,u2)|P=(1,1) を示す。先ほどと、ベクトルが入れ替わっていることが見て取れると思う。
zv1v2以上をまとめると、下表のようになる。
(ui,w) 空間
(vi,z) 空間
点 P
(ui|P,F(ui|P,ak))
(vi|P,G(vi|P,ak))
法線ベクトル
(vi|P,-1)=(∂F
∂uiaP,-1)
(ui|P,-1)=(∂G
∂viaP,-1)
接平面の切片
-G(vi|P,ak)
-F(ui|P,ak)
Legendre 変換とは、変数として:点と、そこでの grad を入れ替え、関数として:特性関数の値と、そこでの接平面の切片の値を入れ替える変換であると言える。超曲面の(接)点と、接平面は一対一に対応する(双対性)。超曲面を(接)点の集合と考えることもできれば、全ての接平面の包絡面と考えることもできる。Legendre 変換は、「超曲面の見方を変える変換」と言うこともできるだろう。
T≦0が成り立つ。等号は準静的可逆過程でのみ成り立ち、この時、状態量(経路によらない量)としてエントロピー S が定義でき、dS=d'qrev
Tで与えられる
なされる仕事は体積の変化だけとすると、圧力を P, 体積を V として、d'wrev=-P dV以上から第一法則は、dU=T dS-P dVとなり、 U は S, V の関数 U(S,V)となる。つまり、 S と V が決まれば、その前の履歴、すなわち経路によらず確定する。こうした関数/変数を状態量と呼ぶ。その微小変位は各変数の全微分で表されるから、dU=∂U