Legendre (ルジャンドル) 変換
   ━━ 特性関数に基づく変換


Legendre 変換
通常、変数変換は、ある変数の Set {ui}{vi} への写像 𝜙 を与えることで行われる。vi=𝜙i(uj)ここでは少し変ったタイプの変数変換を考えよう。 動機としては、ある変数空間で、系の特性関数の変化を考えたいが、その変数が扱いにくい。そこで、別の変数空間を用意し、特性関数も選びなおして、その変化を追ってやることで、系の変化を捉えることができないか、というものである。 元の変数空間での座標を (ui,aj),系の特性関数を F(ui,aj)として、{aj} は元の変数のまま、{ui} {vi} に変換したいものとする。新変数 vi を、vi∂F
∂ui
, i=1...n
で定義する。別の言い方をすると、 F(ui,aj)の全微分を取ったときの dui の係数をもって、新変数 viとする。
dF=∂F
∂ui
dui+∂F
∂ai
dai
vi dui+∂F
∂ai
dai
ここで、Einstein の規約に従って、同じ添え字が上下に出現した場合は、その添え字について和を取るものとする。 新変数の空間における座標を (vi,aj),これに対応して、そこでの場 G(vi,aj)を、G(vi,aj)uivi-F(ui,aj)と定義してやる。 G (vi,aj) の関数という意味は、先ほどの、新変数についての n 個の方程式vi∂F
∂ui
, i=1...n
から、n 個の uj を逆に解いて、 G の右辺にある uj を全て vi で置き換えるということだが、このように定義した G の独立変数を、確かに (vi,aj) とみなすことができるということは、G の全微分を取ってみれば分かる。 逆に解いた ui を、ui𝜓i(vj)としてG(vi,aj)=𝜓i(vj)vi-F(𝜓i(vj),aj)の全微分を取ると、
dG=𝜓i(vj)dvi+vid𝜓i-∂F
∂𝜓i
d𝜓i-∂F
∂ai
dai
=𝜓i(vj)dvi+(vi-∂F
∂𝜓i
)d𝜓i-∂F
∂ai
dai
=𝜓i(vj)dvi-∂F
∂ai
dai
=uidvi-∂F
∂ai
dai
∂G
∂vi
dvi+∂G
∂ai
dai
d𝜓i はさらに dvi で展開できるが、ここでは必要なかったのでこのままにしておいた。 こうして、G (vi,aj) 上の関数、 (vi,aj) 空間の場となっていることが確かめられた。 また、3 行目と 4 行目を比べることにより、旧変数 ui は、新変数の空間における場 G を用いて、ui=∂G
∂vi
で与えられることが分かる。 系について、 (vi,aj) 空間で G の変化を追った後、 (ui,aj)空間での F に戻る作業は同じようにしてできる。つまり、今度は (vi,aj) 空間で G が先に与えられたものと考えると、 (vi,aj)(ui,aj) への逆変換は、先ほどの式で F G をそれぞれ移項した形F(ui,aj)uivi-G(vi,aj)としてやり、同じようにui∂G
∂vi
と定義してやればよい。 ここでも、ui の定義から逆に解いた vi を、今度は vi(uj) と略記することにして、F(ui,aj)uivi(uj)-G(vi(uj),aj)に対し、全微分を取ると、
dF=dui vi(uj)+uidvi-∂G
∂vi
dvi-∂G
∂ai
dai
=dui vi(uj)-∂G
∂ai
dai+(ui-∂G
∂vi
)dvi
=vi dui-∂G
∂ai
dai
∂F
∂ui
dui+∂F
∂ai
dai
となるから、確かに F (ui,aj) が独立変数となっている。 F(ui,aj) (と F ui による偏微分)だけから G が定義されたように、G(vi,aj) (と G vi による偏微分)だけから F が再現されたことに注目してほしい。 因みに変換を受けない dai の係数を比較することで、∂F
∂ai
=-∂G
∂ai
の関係がある。 新旧、両変数の、一方から他方への変換が、同じ形で表現され、対称性が著しい。これを Legendre の(二重)変換と言い、変換を受ける ui,vi を能動変数、変換を受けない aj を受動変数と呼ぶ。 両方向への変換が可能だから、当初の目的通り、 (ui,aj)空間での場 F の変化を考える代わりに、より都合の良い (vi,aj)空間での場 G の変化を追えばよいということになる。両者は同等である。 dF dGを比較してみると、
dF=vi dui+∂F
∂ai
dai
dG=ui dvi+∂G
∂ai
dai
となるので、Legendre 変換とは、微分形式 1-form の、基底の変数と、その微係数を入れ替える変換である、ということもできる。 また、符号を逆転して G の定義することもできる。これは本質的なことではない。G'F(ui,aj)-uiviとしてもvi∂F
∂ui
としてやれば
dG'=∂F
∂ui
dui+∂F
∂ai
dai-dui vi-uidvi
=-uidvi+∂F
∂ai
dai+(∂F
∂ui
-vi)dui
=-uidvi+∂F
∂ai
dai
∂G'
∂vi
dvi+∂G'
∂ai
dai
となるので、 G' は、(vi,aj)が独立変数となる。ただし、逆変換はF=G'+uiviui=-∂G'
∂vi
で与えられ、少々対称性は悪くなるが、新旧、両変数に行き来できる点は変らない。
Legendre 変換の適用できる条件
ここまで、特性関数 F の形には触れてこなかったが、実はどんな関数でも Legendre (二重)変換で新旧、両変数に行き来できる訳ではない。例えば、vi∂F
∂ui
が異なる ui=ui1,ui2 で同じ値を取る場合、ui vi が多対一対応となるため、これまでの定義の仕方ではG(vi,aj)uivi-F(ui,aj)が定まらなくなる( vi の定義から uj を逆に解いて、右辺にある uj を全て vi で置き換えることができない)。ではどのような場合に変換が成り立つだろうか? 導出の過程で、vi の「 n 個の方程式・・・から、n 個の uj を逆に解いて、 G の右辺にある uj を全て vi で置き換える」とさらっと書いたが、先ほど反例を挙げたように、正にこれが可能であることが Legendre 変換の条件となる。 そのためには、特性関数 F が能動変数の各 ui について、その定義域内において、何回でも偏微分可能で、偏微分が強単調ならばよい。ui vi が一対一対応となってこの条件が満たされるので、 Legendre (二重)変換が可能となる。なお、受動変数 aj は変換に関与しないので、変換に対する条件はない。 実はこの変換の条件が、 Legendre 変換を直感的に理解する鍵になるのだが、それについては次のセクションで説明することとし、偏微分が強単調ということについて、少し数学の話をしておこう。 強単調、すなわち凸性の判定は、能動変数に対する Hesse(ヘッセ)行列A2F
∂ui∂uj
を用いることができる。以下、数学の定理を証明抜きで結果だけ示しておく。 下に凸の判定条件:u=(ui) をゼロベクトルでない任意のベクトルとして、tu A u=2F
∂ui∂uj
uiuj>0
が成り立つこと。このとき、「 A は正定値である」という。 A の全ての固有値が正であること。 強単調であるためには、上に凸か、下に凸であればよいので、特性関数 F または -F がこの条件を満たせばよいということになる。 この先、解析力学のカテゴリでは特に断りがない限り、この条件が満たされているものとして議論を進める。 解析力学において、Legendre 変換は、速度配位空間における Lagrangian L から、相空間における Hamiltonian H の導出と、正準変換の場面で、重要な役割を果たす。 最後に、特性関数 F が強単調ならば、変換先の特性関数 G も新変数に関して凸性が保持され、逆変換も保証されることを確認しておこう。 そのためには、この先、あまり使われることもないが、微小変位ベクトルの成分が、変換によってどう写像されるかを先ず考える( u 空間上の近傍の 2 点は、Legendre 変換でやはり、v 空間上の近傍の 2 点に変換されるので、それぞれ、微小変位ベクトルを定義することができる。この両者の間の変換を考えるということ)。ここでは受動変数 ai はパラメータ扱いとして固定する。 Legendre(順)変換における定義vi∂F(uj,ak)
∂ui
から、u 空間上の微小変位 ( Δuj ) は変換により、対応する v 空間上の微小変位( Δvi )=( 2F
∂uj∂ui
Δuj )
と写像されるので、微小変位ベクトルの変換行列は、Hesse(ヘッセ)行列となっていることが分かる。任意のベクトルは、微小変位ベクトルのスカラー倍で表されるので、ベクトルの変換則もまた、Hesse 行列で与えられる。 また、Legendre(順)変換の帰結ui=∂G(vj,ak)
∂vi
から、( Δui )=( 2G
∂vj∂vi
Δvj )
となる。 今、特性関数 F は下に凸とすると、任意の微小変位ベクトル Δu=(Δui,Δuj,...) に対して2F
∂ui∂uj
ΔuiΔuj>0
が下に凸なための必要十分条件となる。v 空間における特性関数 G について、任意の微小変位ベクトル Δv=(Δvi,Δvj,...) について
2G
∂vj∂vi
ΔvjΔvi
=
∂vj
(∂G
∂vi
)ΔvjΔvi=Δui Δvi
=Δui2F
∂uj∂ui
Δuj
>0
となり、G も下に凸となる。 F が上に凸の場合も同様なので、Legendre 変換において、新変数に関して特性関数の凸性は保たれることが示された。 先ほど、受動変数には Legendre 変換のための条件はないと述べたが、受動変数が凸性を持つ場合、G の定義から、その凸性は上下が逆転することになる。 以下は余談。ここではこれ以上、触れないが、より一般には、Legendre 変換の条件をもう少し緩めてやることができる。特性関数 F が各 ui について、上または下に凸であることが満たされていれば、仮に -0, 左からの偏微分係数と、+0, 右からの偏微分係数が異なる点が存在してもよい。また、 F がある区間で ui の一次関数(その区間で vi 一定)でもよい。ただし、この場合は Legendre 変換の定義を拡張してやる必要がある。興味のある方は、熱力学の教科書を調べてみてほしい。一次相転移で偏微分可能でない点が現れるため、この拡張が必要となる。
Legendre 変換の幾何学的な理解
Legendre 変換を視覚的に捉えるため、(ui) にもう一つ、各点での値を与える座標軸として w を加えて、(ui,w) 空間を考える。 特性関数の凸性から、接平面は特性関数とその接点ただ一点のみで接し、他の点では交わらない。接点を P 、各成分を ui|P ,∂F
∂ui
aP
などと表記することにする。
接平面の満たす方程式は、Taylor 展開を一次で打ち切ったものに他ならないから、w(ui)=F(ui|P,aj)+∂F
∂uj
aP(uj-uj|P)
で与えられる。少し変形すると、(∂F
∂uj
aP,..,-1)a
uj-uj|P
:
w-F(ui|P,ak)
=(F,-1)a
uj-uj|P
:
w-F(ui|P,ak)
=0
となるので、接平面の法線ベクトルは (F,-1) となる。 (ui)=(0,..,0) を代入して、w-切片を考えると
w(0,..,0)=-(∂F
∂uj
aPuj|P-F(ui|P,ak))
=-(vj|Puj|P-F(ui|P,ak))
=-G(ui|P,vj|P,ak)
となり、これは変換先の特性関数(の -1 倍) -G となっている。 任意の接点 P に対してこれが成り立つので、接点 P を動かしたときの関数としての w-切片を、添え字 |P を落として -G(ui,vj,ak) とすると、これが vj のみの関数 G(vj,ak) となることは先にみた通りであるが、与えられた特性関数 F のもと、接平面の法線 (F,-1) を決めると、対応する接平面の w-切片が一意に決まる、と考えると Gvj (と受動変数 ak )のみの関数となるのは自然なことが分かるだろう。 こうして、ui から特性関数 Fgrad にあたる vi へ変数変換を行うと、対応する特性関数は、その接平面の切片となることが分かった。 数値的な具体例として、F(u1,u2)=1
2
(u1)2+(u2)2
Legendre 変換を考えよう。
(v1,v2)=(∂F
∂u1
,∂F
∂u2
)=(u1,2u2)
G(v1,v2)=uivi-F=1
2
v21+1
4
v22
(ui,w) 空間上の超曲面 w=F(u1,u2) と、F 上の点 P (1,1,3
2
)
における接平面 w=u1+2u2-3
2
を図示する。
その法線ベクトルは (1,2,-1) 、切片は -3
2
=-G(1,2)
となる。
また、図の下部に(ui) 空間における等 F 線及び位置ベクトル u|P=(u1,u2)|P=(1,1) と、傾き F|P=(v1,v2)|P=(1,2) を示す。 同じことを逆変換でも考えてみよう。逆に解いた ui を、ui𝜓i(vj)としてG(vi,aj)=𝜓i(vj)vi-F(𝜓i(vj),ak)から始める。(vi,z) 空間で、超曲面 (vi,G(vi)) 上の点 (vi|P,G(vi|P)) における接平面は、z-G(vi|P)=∂G
∂vi
aP(vi-vi|P)
z-切片は
z(0,..,0)=G(vi|P)-∂G
∂vi
aPvi|P
=𝜓i(vj|P) vi|P-F(𝜓i(vj|P),ak)-(𝜓i(vj|P) +vi|P∂𝜓i
∂vi
aP-∂F
∂𝜓j
∂𝜓j
∂vi
aP) vi|P
=-F(𝜓i(vj|P),ak)
=-F(ui|P,ak)
となり、今度は z-切片が -F となった。 先ほどの具体例で逆変換を行ってみる。G(v1,v2)=1
2
v21+1
4
v22
Legendre 変換は、
(u1,u2)=(∂G
∂v1
,∂G
∂v2
)=(v1,1
2
v2)
F(u1,u2)=viui-G=1
2
(u1)2+(u2)2
(vi,z) 空間上において、超曲面 z=G(v1,v2) を考える。先ほどの u|P=(1,1) に対応する v|P=(1,2) の、G 上の点をこちらも P とすると、P (1,2,3
2
)
における接平面は、z=v1+v2-3
2
となる。
その法線ベクトルは (1,1,-1) 、切片は -3
2
=-F(1,1)
で与えられる。
また、図の下部に(vi) 空間における等 G 線及び位置ベクトル v|P=(v1,v2)|P=(1,2) と、傾き F|P=(u1,u2)|P=(1,1) を示す。先ほどと、ベクトルが入れ替わっていることが見て取れると思う。 以上をまとめると、下表のようになる。
(ui,w) 空間(vi,z) 空間
P(ui|P,F(ui|P,ak))( vi|P,G(vi|P,ak) )
法線ベクトル( vi|P,-1)=( ∂F
∂ui
aP,-1)
( ui|P,-1)=( ∂G
∂vi
aP,-1)
接平面の切片-G(vi|P,ak)-F(ui|P,ak)
Legendre 変換とは、変数として:点と、そこでの grad を入れ替え、関数として:特性関数の値と、そこでの接平面の切片の値を入れ替える変換であると言える。 超曲面の(接)点と、接平面は一対一に対応する(双対性)。超曲面を(接)点の集合と考えることもできれば、全ての接平面の包絡面と考えることもできる。Legendre 変換は、「超曲面の見方を変える変換」と言うこともできるだろう。
熱力学の特性関数 U,H,F,G
ここでは、閉じた系における熱力学の特性関数を例にとり、 Legendre 変換を具体的に行ってみよう。能動変数、受動変数がそれぞれ一つづつで、格好の例題となる。 前提:熱力学の第一・第二法則の簡単なおさらい 均一な閉じた系における可逆、準静的な状態変化を考える。
熱力学の第一法則:エネルギー保存則  系の内部エネルギーを U 系への熱の流入を d'qrev 、なされる仕事を d'wrev として、dU= d'qrev+d'wrev が成り立つ
  
熱力学の第二法則:エントロピーと熱の関係 温度 T として、クラウジウスの不等式d'q
T
0
が成り立つ。等号は準静的可逆過程でのみ成り立ち、この時、状態量(経路によらない量)としてエントロピー S が定義でき、dS=d'qrev
T
で与えられる
なされる仕事は体積の変化だけとすると、圧力を P, 体積を V として、d'wrev=-P dV以上から第一法則は、dU=T dS-P dV となり、 U S, V の関数 U(S,V) となる。つまり、 S V が決まれば、その前の履歴、すなわち経路によらず確定する。 こうした関数/変数を状態量と呼ぶ。その微小変位は各変数の全微分で表されるから、dU=∂U
∂S
dS+∂U
∂V
dV=T dS-P dV
T P は測定可能な量だが、この場合、どちらも S,V の関数 T(S,V), P(S,V) とみることに注意。 閉じた系における熱力学では、変数を二つ指定してやれば状態が定まる。同じ物理量でも、変数の組み合わせが複数あるため、偏微分をどの変数の組で行うかを明示してやる必要がある。 そこで、固定する側の変数を右下に書いてやることにする。T =(∂U
∂S
)V ,P=-(∂U
∂V
)S
これに対して、qrev, w は系の状態を表す量ではなく、系が状態 12 へと変化する際、その経路が異なれば値も異なってくる。 その微小量は全微分では表されないことを示すために d'qrev のようにダッシュつけてある。すると、第二法則が不思議に思えてこないだろうか?全微分でない量をある関数で割ってやることで、全微分になるとは、一体どういうことだろう? 数学的には、 2 変数の微分形式 1-form には、必ず積分因子が存在するから。というのがその答だが、積分因子(を与える関数の一つ)が、絶対温度であり、測定可能な温度計の示す温度と関連づけられるということが、自然というものは実に不思議だと思うのである。 話が大分、脇道にそれてしまったが、本題に戻ろう。(S,V) 空間の特性関数 U が考える対象だが、変数 S は扱いにくい。そこで Legendre 変換を行ってより扱いやすい変数に変更しよう。 可能な変換の組み合わせは、 U(S,V) も含めて (ST), (VP) の計 4 通り。 実際の導出は、新しい特性関数を作ってやれば、各項の全微分をとることで、不要な項は打ち消しあい、新しい変数が自動的に決まる。 (VP) エンタルピー H(S,P) HU+PVと定義し、各項の全微分をとると
dH=dU+dP V+PdV
=TdS-PdV+dP V+PdV
=VdP+TdS
だから、エンタルピー H (S,P) の関数 H(S,P) であることが分かる。 この場合、 V,T も、(S,P) の関数 V(S,P), T(S,P) とみる。熱力学では、変数を二つ指定してやれば状態が定まるから、受け入れ易いだろう。もしくは先述の Legendre 変換における新変数の定義に則って、P-(∂U
∂V
)S
V について逆に解き、T(S,V) V を置き換えて T(S,P) とする。 用途:等圧変化を考えると、 dP=0 からdH=TdS=d'qrev 等圧条件下でのエンタルピーの変化は熱の出入りに等しい。 (ST) ヘルムホルツの自由エネルギー F(T,V) FU-TSと定義し、各項の全微分をとると
dF=dU-dT S-TdS
=TdS-PdV-dT S-TdS
=-SdT-PdV
だから、ヘルムホルツの自由エネルギー F (T,V) の関数 F(T,V) であることが分かる。 用途:等温変化を考えると、 dT=0 からdF=-PdV 等温条件下でのヘルムホルツの自由エネルギーの変化は外部からなされる仕事に等しい。 言い換えると、等温変化で外部に取り出せる仕事、系の外部が自由に使えるエネルギーは、 ヘルムホルツの自由エネルギーの減り高に等しい。 (VP) (ST) ギブスの自由エネルギー G(T,P) GU+PV-TSと定義し、各項の全微分をとると
dG=dU+dP V+PdV-dT S-TdS
=T dS-PdV+dP V+PdV-dT S-TdS
=-SdT+VdP
だから、ギブスの自由エネルギー G (T,P) の関数 G(T,P) であることが分かる。 用途:等温等圧変化を考えると、 dT=dP=0 からdG=0 等温等圧条件下ではギブスの自由エネルギーは変化しない。 気液平衡、半導体の p-n 接合の電子分布など、熱平衡の条件となる。また、変数 (T,P) ともに示強性の変数のため、系に微小な系を追加する場合に考えやすい。 熱力学を学んだ際、後から後から出てきた特性関数は、等圧、等温など、考えている系の条件に応じて特性関数を選んでやればよいだけの話だったことが分かる。それにしてもこれは便利だし、今回、変換の例を紹介するために、ちょっと調べてみただけだが、今考えると、熱力学は面白い。 熱力学の例はここまで。いよいよ、Legendre 変換を使って、共役運動量 pi Hamiltonian H を導き出そう。

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