∂ui} と表記することが自然なことも明らかになる。曲線、方向微分、接ベクトル超曲面 M を考える。曲線、スカラー場、方向微分、ベクトルを以下のように定義する。・曲線P を M 上の点として、 連続した点列を「経路 (pass)」と呼ぶ。曲面上の「曲線 (curve) 」とはパラメーターつき経路、数直線から経路への写像C:s∈R↦P(s), a⩽s⩽bと定義する。座標系がなくても曲線は定義できるので、曲線は「幾何学的実在」である。・スカラー場M 上の各点ごとに数(スカラー)を与える関数 f(P) をスカラー場と呼ぶ。スカラー場も座標系なしで定義でき、「幾何学的実在」である。・方向微分スカラー場 f(P) の、曲線に沿った方向微分を df
ds≡limΔs→0f(P(s+Δs))-f(P(s))
Δsと定義する。こちらも座標系によらない。・接ベクトル内在的に曲面を取り扱うとき、ベクトルも曲面の外に出ることはできないので、位置ベクトルを含め、有限な距離の 2 点間を結ぶベクトルは定義できないことになる。それらは超曲面からはみ出してしまう。はみ出さないと考えられるものは、微小変位ベクトル(の極限)だけになってしまうが、有限の大きさのベクトルも扱えるようにするために、超曲面 M 上の各点 P における接空間(3 次元における曲面では接平面) TpM 上で、ベクトルは定義されるものとしよう。そうすると、曲線の接ベクトルをV≡limΔs→0P(s)P(s+Δs)
Δsと定義することができる。接ベクトルの和やスカラー倍にあたる接ベクトルを持つ曲線は必ず存在する。また、ゼロベクトルは点 P 一点への写像 CPCP:s∈R↦P(s)=P, a⩽s⩽bにおける接ベクトルと考えればよい。線形性(和とスカラー倍がともにベクトルとなること)と、ゼロベクトルが存在することの条件を満たすので、接空間 TpM はベクトル空間となっている。PTPMCTQMQVMabRs図では 2 次元の曲面を 3 次元から、曲面の外側から眺めているが、内在的な曲面論では本来、この視点は持てないことを頭の片隅に置いておいてほしい。パラメーター s を時間と考えると、これは速度ベクトルと見なすことができる。また、微小間隔 Δs に対応する微小変位ベクトルは接ベクトルを用いて、P(s)P(s+Δs)=VΔsと書ける。超曲面 M 上の点 P, Q における接空間 TpM, TQM は別の空間となることに注意。すなわち、 P, Q におけるベクトルはそれぞれ別の空間に属するので、単純に平行移動や比較はできないことになる。こちらについてはチャプターを改めて、後ほど説明する。また、ここではこれ以上触れないが、超曲面 M 上の各点 P の接空間 TpM すべて集めたもの ∪TpM を接ベクトルバンドル、各点 P でベクトル V|P が定義できるとき V をベクトル場と呼ぶ。このように方向微分も接ベクトルも座標系なしで定義できる。即ち、座標系によらない「幾何学的実在」である。また、同じ経路だがパラメータの刻みが異なる場合、方向微分、接ベクトルは、単位パラメーターあたりの変化率となるので、その値や大きさは異なってくる。従って、同じ経路でもパラメータが異なる場合は別の曲線とみなすことにする。曲線を変えることにより、接ベクトルは接空間の任意のベクトルを表すことができる。座標系を入れる超曲面 M に座標系を採り入れよう。 M の各点が (u1,u2,...,un)と n 個の変数で指定されるとき、 超曲面 M は n 次元であるという。座標の成分を用いて、曲線、方向微分、ベクトルがどのように表現されるか、考えよう。(ui)の表記で (u1,u2,...,un)を表すこととする。・曲線C:{(ui)=(ui(s)), a⩽s⩽b}・方向微分
df
ds
≡limΔs→0f(P(s+Δs))-f(P(s))
Δs
=n∑i=1dui
ds∂f
∂ui
=(n∑i=1dui
ds∂
∂ui)f
・接ベクトル接空間 TpM における ui 軸方向の基底ベクトルを ei として、
V
=limΔs→0P(s)P(s+Δs)
Δs
=n∑i=1dui
dsei
≡n∑i=1Viei
基底ベクトルが接空間 TPM に属することから基底ベクトルは ei|P もしくは ei|TPM と記載すべきだが、煩雑となるので ei とした。繰り返しとなるが、点 P の ei は、点 Q の接空間 TQM には属していないことに注意(曲面を外側から見て、通常のやり方で「平行移動」すると TQM からはみ出してしまう)。uiujejeiPTPMCVTQM基底ベクトル ej は次のようにして求まる。点 P を通り、座標軸 uj に沿った曲線 CjCj:{(u1,u2,...,uj,...un)=(u1|P,u2|P,...,uj(s),...un|P), a⩽s⩽b}で、パラメーター s が uj 座標の刻みと一致する場合、a
V
=n∑i=1dui
dsei
=n∑i=1𝛿ij ei=ejとなる。よって、Cj について、
ej
≡limΔs→0P(s)P(s+Δs)
Δs,on Cj
=limΔuj→0P(u1,...,uj,...un)P(u1,...,uj+Δuj,...un)
Δuj
に従って ej を決定すればよい。これを座標基底と呼ぶ。n 個の基底 {e1,...,en} は接空間 TPM を張る。曲線 Cj 上の微小変位ベクトルP(s)P(s+Δs)=VΔs=ejΔsで Δs=1 とすると、P(s)P(s+1)=P(u1,...,uj,...un)P(u1,...,uj+1,...un)=ejとなる。もちろんこれは接空間 TpM からはみ出してしまうだろうから定義できないのだが、イメージとしては、ej は概ね、座標軸 uj の 1 刻み分のベクトルとなることが分かる。方向微分を任意の関数 f への微分作用素と見なしたとき、その ∂
∂ui の係数と、接ベクトルの ei 成分はどちらも dui
ds で共通している。このことからも、両者は 1 対 1 の対応関係にあることが分かる。ある点 P を通る曲線 C が決まると接ベクトル V が決まり、任意の関数 f に対する方向微分 df
ds も定まるという構図となっている。ベクトルのノルムを決めるには計量が必要基底ベクトルの定め方からも分かるように、座標系の刻みに応じて基底ベクトルは変化する。uiujejeiPTPMCui 'ujC図右のように ui の刻み幅だけを 1/2 倍にした系では ei も 1/2 倍となる(他の基底ベクトルは変化せず、そのまま)。座標系の変化により、基底の相対的な大きさは何倍になったとは言えるが、その絶対値、ノルムはベクトル間の内積がまだ定義されていないため、定まらない。基底の線形和であるベクトルも同様である。大きさを決定するためには、各点において、座標基底間の内積gij≡ei∙ejを定義してやる必要がある。それが計量を決めるということだが、こうすることで、任意のベクトル V のノルムは、
dsと表記する立場まである。これがベクトルの現代的な定義とその帰結だが、ここまでくると、少し急進的に過ぎるかもしれない。本ホームページではこの表記は使わないこととしよう。対象がベクトルであるためには、その成分がある変換性を満たす必要があることが分かったが、ベクトルとは真逆の変換性を示すものがある。その最たる例が grad. こちらはベクトルではなく、その双対、1-form に属する。次はこちらについて。