「運動エネルギーとポテンシャル・エネルギーの和は時間によらず一定である」。これを力学的エネルギー保存則という。ポテンシャル・エネルギー U(xi) は位置だけの関数となっていて、時間にもよらない。言い方を変えると、物体がどういう経路でその位置に到達したか、という過去の経緯によらない。また、どの時刻にその位置に到達しても同じ値を与える。近代科学の黎明:時代背景 のチャプターでお話した、ガリレオの振り子の実験を思い出そう。刃物で振り子の長さを変えても、左側の到達点 S は同じで、最下点での速度は等しかった。背景には力学的エネルギー保存則があり、 S における、一様重力場のポテンシャル・エネルギーが経路、時間によらず、S の位置(高さ)のみによることで説明されることが分かる。
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例題 その 1 単振動ニュートンの法則のところでやったバネの問題を考えよう。滑らかな床の上に置いた物体(質量 m )にバネ定数 k のバネがつながれている。物体を引き、t=0 に、バネが x0 だけ伸びた位置で手を離す。その後の物体 m の運動の保存量を調べよう。バネが自然長となる時の、物体の位置を原点とするような座標系をとり、x 軸とする。初期条件:a
(x(0),y(0))=(x0,0)
(vx(0),vy(0))=(0, 0)
0x0yxvFNmgR
物体を内界とし、これに働く力は、三つ。バネの力 F, 重力 mg , 垂直抗力 N (滑らかな床で摩擦無しとしているため、向きは垂直、大きさはこの段階では不明で N とおく)。成分で表すと、x 方向: Fx=-kxy 方向:-mg, Ny 方向は y(t)=0 なので、x 成分のみ、一次元の問題として考えればよい。x 方向の運動方程式は、a
dt運動方程式をエネルギー積分したものの、右辺 F⋅v を考えると、これは単位時間に系がなされる仕事であった。回路方程式でも同様のことを行いたい。vi は回路に入力されるパワー(単位時間に入力されるエネルギー)となることに注意して、回路方程式の両辺に i をかけてみる。
v i
=Ri2+Lidi
dt+Q
CdQ
dt
=Ri2+d
dt(1
2Li2+1
2Q2
C)
「単位時間に入力されるエネルギーvi は、Ri2 と、(1
2Li2+1
2Q2
C) の時間的変化率に等しい」。Ri2 は抵抗で単位時間に熱として消費されるエネルギーで、系から流出するエネルギー。1
2Li2 をコイルに蓄えられるエネルギー1
2Q2
C をコンデンサに蓄えられるエネルギーという。このうように、いろいろな場合のポテンシャル・エネルギーの式は覚える必要はなく、運動方程式や回路の方程式を書き下すことができれば、その場でエネルギー積分によって、導き出すことができる。保存力と非保存力エネルギー保存則:力の大きさに原始関数が存在する場合 のセクションで、”関数 Fi の原始関数が、Fi=-dU