これは見方を変えれば、2 次元上のベクトルは、x 軸方向と y 軸方向の二つのベクトルの和に分解してもよいし、動径方向とそれに垂直な方向の二つのベクトルの和に分解してもよいと考えることもできる。計算を進めるうえで都合の良い方を採用すればよい。円運動の軌跡を考える場合や、万有引力やクーロン力など、中心力となるものはその力の源を原点とした極座標をとってやると、見通しがよくなる。極座標におけるベクトルの時間微分物理学の世界では、時間微分をドット ␒ と略記することが多い。 例えば運動量の時間微分 dp
dt≡␒p など。ここではこの記述法を採用する。まずは物体の軌跡に関して、速度ベクトル。速度ベクトルは位置ベクトル r を時間で微分すればよいのだが、位置ベクトルと、極座標の座標基底とは少し相性が悪い。ぱっと見、r=rer を微分すれば問題ないのでは?と思ってしまうが、その er はどの点における er なのか? 原点なのか、それとも軌跡上の点なのか? そもそも、極座標では原点は除外していた。そこで、点 P における速度ベクトル v は次のように求める。
v=␒r
=(exey)a
␒x
␒y
=(exey)a
␒rcos𝜃-rsin𝜃␒ 𝜃
␒rsin𝜃+rcos𝜃␒ 𝜃
=(exey)a
cos𝜃
-rsin𝜃
sin𝜃
rcos𝜃
a
␒r
␒𝜃
=(exey)a
𝛬
a
␒r
␒𝜃
=(ere𝜃)a
␒r
␒𝜃
位置ベクトルは極座標では表現できなくても、速度ベクトルは表現できた。ひとたび v が極座標とその座標基底で表せれば、加速度 ␒vはライプニッツ則を用いて、
点 A から点 B へのベクトルの平行移動を考えよう。2 点間を直線で結んだ経路に沿って移動する場合、直線とベクトルのなす角度を一定にして移動してやればよい。同一、平行移動されたとみなされるベクトルの成分が、その点の位置情報 (r,𝜃) と、定数 V0, 𝛼 のみで表現されることから、ベクトルの平行移動は経路によらない。直感的にも当然だろう。ABV∥O実は平行移動が経路によらないのは、Flat な平面に限られており、歪んだ空間では経路によって、平行移動の結果が異なる。逆にこれを使って、考えている空間(または面)が Flat かどうかを判断することができるのである。以上、余談でした。大学をお楽しみに。極座標におけるエネルギー積分「エネルギー保存則」例題 その3 惑星の運動 で行った、極座標のエネルギー積分を今度は正攻法でやってみよう。原点に質量 M, 位置 r に質量 m の物体があるとき、m の運動を考える。