∂y)とベクトル解析の分野では記載する。∇はギリシャ文字のナブラで、∇ U は、"gradient U" (Uの勾配)と読む。見知らぬ記号が出てくると、難しく見えるが、定義をしっかり押さえておけば大丈夫。この場合、デカルト座標の正規直交基底で考えているので、基底は ex,ey 。そうすると、e 方向の傾きは、∂U
∂ e=∇ U⋅eと、ベクトルの内積で表すことができる。傾きについて、関数由来の情報は ∇ U に、考えている方向由来の情報は e に含まれることになる。単位ベクトル e の方向を変化させたとき、
maxa(∂U
∂ e)a
=|∇ U |; for e∥∇ U
mina(∂U
∂ e)a
=0 ; for e⟂∇ U
即ち、∇ U は最大傾斜の方向を表す。微小変位を、 e⟂∇ U を満たす方向につないでいくと、等 U 線と呼ぶべきものができあがる(地形図の等高線に相当)。各点における ∇ U は、「等 U 線に垂直で、最大傾斜の傾き」を表す。
xyU(x,y)∇ U等 U 線
以下は、余談の余談。読み流してください。∇ U は、実はベクトルではなくて、その双対、1 形式( 1-form )である。その基底は{dx,dy} で、基底こみで表すと、∇ U=∂U
∂x dx+∂U
∂y dy今の議論ではベクトルの基底として、デカルト座標の正規直交基底をとっており、その双対基底が元の基底と一致するため、ベクトルのように扱った。興味のある方は、将来、微分幾何・微分形式という分野をあたってみてほしい。ベクトル、多変数の微分、積分を一段高い視点から簡潔に表現しており、非常にエレガントで自分も大好きな 分野です。前のチャプターで扱った、座標基底を採用すると、デカルト座標の正規直交基底に限らず、対応する 1 形式 ∇ U の各成分は、単にそれぞれの座標で偏微分したものになり、すっきりと表すことができる。ベクトルの線積分x-y 面内で、点 P(xp,yp) における微小変位ベクトルを 𝛥r とする。その方向の単位ベクトルを今度は t、大きさ | 𝛥r|=𝛥s として、 𝛥r=t𝛥s . 𝛥r と考えているベクトルB(xp,yp)との内積は、数 𝛥A を与える。𝛥A=B⋅𝛥r=Btt⋅t𝛥s=Bt𝛥sB の 𝛥r 方向成分を Bt とした(t は tangent line , 接線 の t から採った)。今度は微小変位から、有限長の場合に話を拡張しよう。点 P を通る経路 C (始点 S,終点 E )をN 分割し、各要素を直線で近似する。各要素における 𝛥Aiの総和 AC を求めよう。分割方法は N→∞ の極限をとったとき、各要素の大きさが全て 0 に近づくようにとればよい。例えば、𝛥s 一定、つまり各要素の経路長が一定になるように分割してやればよい。
Bi𝛥riCxyPSEC'
AC=limN→∞∑i𝛥Ai
=limN→∞∑iB(ri)⋅𝛥ri≡rE∫rS,CB⋅dr
=limN→∞∑i Bt(ri) 𝛥s≡rE∫rS,C Bt ds
∴∫CB⋅dr
=∫CBt ds
これをベクトルBの、経路 C に沿った線積分もしくは接線積分と呼ぶ。始点、終点は同一だが、異なる経路 C' に沿った線積分 AC' は ACと同じ値になる保証はなく、一般には異なる値となる。だが、ある条件を満たすとき、AC=AC' が成り立つ。それは、ベクトルBに、ある関数 U が存在して、B=(∂U
∂x,∂U
∂y)≡∇ Uが成り立つ場合。
AC=limN→∞∑i𝛥Ai
=limN→∞∑i(∂U
∂x 𝛥xi+∂U
∂y 𝛥yi)≡∫C∇ U⋅dr
=limN→∞∑i𝛥Ui=limN→∞∑i(Ui+1-Ui)=U(rE)-U(rS)
∴∫C∇ U⋅dr
=U(rE)-U(rS)
となり、「∇ Uの線積分は、U の終点と始点の差のみで与えられ、途中の経路によらない」。つまり AC=AC' が成り立つ。∫C∇ U⋅dr=∫C'∇ U⋅dr任意の閉曲線に沿った積分は、経路を二つに分け、それぞれ C,C' と分割することにより、∮∇ U⋅dr=∫C∇ U⋅dr-∫C'∇ U⋅dr=0「ベクトル(場)が∇ U と表せる場合、その一周積分は 0 となる」。一変数から多変数への合成関数の微分経路 C 上を物体がr(t)=(x(t),y(t)) と移動していくとすると、U(x(t),y(t))は時間 t の一変数関数となるので、t で微分することができる。具体的には、一変数の場合と同じように、各変数 x,yへ Chain rule を適用すればよい。微小変位の増分 𝛥U について、微小時間を 𝛥t として、𝛥U=∂U
∂x 𝛥x+∂U
∂y𝛥y=∂U
∂x𝛥x
𝛥t 𝛥t+∂U
∂y𝛥y
𝛥t 𝛥tだから、その極限をとって、
dU
dt
=∂U
∂xdx
dt+∂U
∂ydy
dt=∇ U⋅dr
dt
=∂U
∂xvx+∂U
∂yvy=∇ U⋅v
x,y は t のみの関数なので、偏微分ではなく、微分 d
dtでよい。t で積分してみよう。少々回りくどいが、
tE∫tSdU
dt dt
=tE∫tS(∂U
∂xdx
dt+∂U
∂ydy
dt) dt
[U]tEtS
=U(rE)-U(rS)
=rE∫rS∂U
∂x dx+∂U
∂y dy=∫C∇ U⋅dr
∴∫C∇ U⋅dr
=tE∫tS∇ U⋅dr
dtdt
一変数から多変数への合成関数の場合も、置換積分(変数変換)ができることが分かった。三次元への拡張本質的な話は二次元で終ったので、三次元への拡張は簡単。全微分は z についての偏微分が増える。dU=∂U
∂x(xp,yp,zp) dx+∂U
∂y(xp,yp,zp) dy+∂U
∂z(xp,yp,zp) dz∇ U≡(∂U
∂x,∂U
∂y,∂U
∂z)ベクトルの線積分の形は変わらず。
rE∫rSB⋅dr
=rE∫rSBt ds
ベクトル B が∇ U と表せる場合も同様。∫C∇ U⋅dr=U(rE)-U(rS)以上を用いて、エネルギー保存則 ― vとの内積を取ってみる で課していた、 「力が座標基底ベクトルと平行で、かつその大きさはその座標変数だけの一変数関数となる場合」の制約を外そう。エネルギー保存則 Revisitedベクトル解析の道具がそろったところで、エネルギー保存則 ― vとの内積を取ってみるでやったことをさらってみよう。同じ手順をたどるが、今度はもっと見通しよくやろう。運動方程式 mdv
dt=F の両辺に、速度ベクトル v=dr
dt との内積をとる。m v⋅dv
dt=dr
dt⋅F左辺について、|v|=v として、
m v⋅dv
dt
=m(vxdvx
dt+vydvy
dt+vzdvz
dt)=d
dt(1
2mv2)
=d
dt(1
2mv⋅v)
両辺等しいとおいてd
dt(1
2mv2)=F⋅dr
dt「運動エネルギーの時間的変化率はは、外部からなされた仕事率に等しい」。微分型から積分型に移行しよう。時刻 tSから tE まで、時間で積分すると、右辺は置換積分を行って
r(0)=const.だったから、Qq<0 の場合の、物体の軌跡( C )、働く力( F )、運動エネルギー( K.E.)、ポテンシャル・エネルギー( P.E. )、全エネルギー( Total E. )、ポテンシャル面( U(x,y))のイメージは下図のようになる。全エネルギーは保存されるので、E 方向の高さ一定。U(x,y)xyECK.E.P.E.Total E.=const.F力の方向は、「等 U 線に垂直で、最大傾斜の、 U が減少する方向」となる。これで、微積物理のキモ、運動方程式から、運動量保存、角運動量保存、力学的エネルギー保存の導出までたどり着きました。お疲れ様です。後は途中でふれられなかった、力にはどんな種類があるかと、ニュートンの法則の適用範囲についての落穂ひろいと、本カテゴリのまとめを行おう。