∂uiaPを P における曲線 C の接ベクトルとすると、座標表示で点 P の超曲面上の位置は (u1aP,..,unaP)≡(uiaP),Q は (u1aP+U1𝛥s,..,unaP+Un𝛥s)≡(uiaP+Ui𝛥s) と表される。𝛥s=0 の場合は『平行移動』と言っても移動していないため、元の基底と一致すべきで、恒等変換となる。P-1C(0)(∂
これをベクトルの共変微分と呼び、∇UVaP と書く。座標基底はもちろん、成分も全て点 P での値となった。これは TPM におけるベクトルの差のスカラー倍(の極限)なので、ベクトルの共変微分もまたベクトルであると考えられる。点 P は曲線上、任意の場所にとれるので aP も省略してしまうと∇UV≡Uj{∂Vk
となる。ベクトル場平行の方程式と測地線超曲面の各点で定義されたベクトル場 V について、平行移動したベクトルが移動先のベクトルと一致するとき、すなわちP-1C(𝛥s)(ViaQ∂
∂uiaQ)=ViaP∂
∂uiaPが曲線 C 上の各点(の接平面)で成り立つとき、 V は C に沿って平行であるという。共変微分を用いてこれを書き表すと、 C 上の各点における接ベクトルを U として∇UV=0が C 上の各点(の接平面)で成り立つとき、 V は C に沿って平行であるという。平行であるかどうかを考える対象のベクトルとして、 曲線の接ベクトル U 自体を考えることもできる。∇UU=0が C 上の各点(の接平面)で成り立つとき、接ベクトルU は曲線 C 自身に沿って平行となる。TPMCUMPCPCP逆の見方をすると、ある点 P の接平面にある任意のベクトル U を、それ自身の方向に平行移動していくことで得られる曲線が存在するということである(具体的には、この微分方程式に初期条件を与えることで、解曲線がただ一つ定まる)。これをユークリッド空間の場合で考えると、言うまでもなく、それは直線となる。あるルールで接平面間の平行移動を定めたとき、この解曲線は超曲面における『直線』に相当する特別な曲線となるので、これを測地線と名づけよう。座標系を入れた時の接ベクトルの定義U≡dui
ds∂
∂uiを代入してみると、
∇UU
=Uj{∂Uk
∂uj+Ui 𝛤kij}∂
∂uk
=duj
ds{∂
∂uj(duk
ds)+dui
ds𝛤kij}∂
∂uk
={d2uk
ds2+duj
dsdui
ds𝛤kij}∂
∂uk
=0
これを測地線の方程式と言う。ここでもう一度、繰り返し強調しておきいのは、測地線の方程式 ∇UU=0 は超曲面上の各点での接平面におけるベクトルの方程式であり、得られる解 U もまた各接平面に属するベクトルであるということ。一方で、同じことではあるが、d2uk
dsaP)は超曲面上にある点の座標成分、ひいてはその点を表していることにも注意しよう。ベクトルの終端と、この点が一致するのは 𝛥s→0 の極限を取った場合のみである。関連して、本チャプターの ベクトルの平行移動と共変微分 では、ベクトルの成分 ViaQ を点 P 周りでテイラー展開していたが、これもこのまま議論を進めて問題ないのかと心配になってくる。これは Viを値に持つスカラー場 f(s)=Vi(s) のテイラー展開と考えれば問題ないことがわかるだろう。共変微分の成分に関する記法について座標基底の共変微分のときと同様、曲線の接ベクトル U が l 方向の単位ベクトル ∂
∂ul=𝛿jl∂
∂uj である場合、∇U を ∇l と書く。
∇lV
=𝛿jl{∂Vk
∂uj+Vi 𝛤kij}∂
∂uk
={∂Vk
∂ul+Vi 𝛤kil}∂
∂uk
本来、ベクトルは基底まで含めてベクトルだが、基底を省いて成分だけで議論を進めることも多い。その場合、∇lV の k 成分を Vk;l と略記する。Vk;l≡(∇lV)k=∂Vk
∂ul+Vi 𝛤kilまた、Vk;l のセミコロンに対応して、単に Vk を ul で偏微分したものを Vk,l とコロンで書く。Vk,l≡∂Vk
∂ulこうすると、∇lV の k 成分はVk;l≡∂Vk
∂ul+Vi 𝛤kil=Vk,l+Vi 𝛤kilと書ける。この時、∇UV の k 成分は、U に対する線形性を思い出すと
(∇UV)k
=(Uj∇jV)k
=Uj(∂Vk
∂uj+Vi 𝛤kij)
=UjVk;j
となる。この表記法のよいところは、共変微分の成分について、・先頭の Uj は経路 C の接ベクトル Uについての情報のみからなり、平行移動したいベクトル V にはよらない、つまり平行移動したいベクトルとは独立に決まり、その影響は受けない一方で、・続く Vk;j はV についての情報のみからなり、経路 C にはよらない、つまり経路とは独立に決まり、その影響は受けないという構造となっており、綺麗に経路 C 由来とベクトル V 由来に分離されることを明確に示してくれることである。補足その 1:座標系間の 𝛤kij の変換則を示しはしたが、これは変換則であって、この情報だけから 𝛤kij が求まるわけではないことに注意。少なくとも、ある一つの座標系について、 𝛤kij を別の手段で決めてやらねばならない。それを決めるのは接平面間の『平行移動』のルール、何をもって平行移動とするか?である。ルールが変われば、その値のセットも変わってくる。逆に、『平行移動』のルールを適切に定めてやれば、𝛤kij は一意的に決定される。ベクトル間の内積が定義される、リーマン幾何学のチャプターで、その具体例 Levi-Civita (レビーチビタ)接続を説明する予定。なお、ベクトル間の内積が定義されていれない空間でも、空間の歪み具合を示す曲率テンソルを定義することができるということを強調したいので、リーマン幾何学のチャプターまでは、このままベクトル間の内積を前提とせずに議論を進める。その 2:教科書によって、 𝛤kij の下付き添え字の役割が逆となっているものも結構ある。本の最初の方に明示されているはずなので、確認するようにしてほしい。実は一般相対論においても採用される Levi-Civita 接続は、下付き添え字の対称性𝛤kij=𝛤kjiを持つので、それほど神経質にならなくてもよいのだが、ここでも、添え字の順序はSchutz: "A First Course in General Relativity" に習っている。一般相対論においては、この対称性は、任意の点で局所慣性系をとることができるという要請から導出されることを第二部でお話しする。もう少しだけ補足すると、 Levi-Civita 接続では捩率なしを要請することで、下付き添え字の対称性が満たされることになる。詳しい説明抜きで捩率テンソル T の式だけ書いておくと、T(X,Y)≡∇XY-∇YX-[X,Y]=0となる。なかなかイメージが掴みづらいことと、上述したように、相対論では局所慣性系の要請から対称性は得られるので、ここではこれ以上、深入りはしないことにする。以上、2 点を補足しておく。共変微分はベクトルだけでなく、 1-form やテンソルにも拡張できる。こちらも平行移動の観点から導出していくと、それらの共変微分も、自然とライプニッツ則を満たすことが示される。