ベクトルの共変微分
   ━━ 平行移動との関係


何が問題か?
方向微分とベクトル ━━ 現代的な定義 で説明したように、超曲面 M 上の各点 P で定義されたスカラー場 f(P) の、曲線 C(s) に沿った方向微分は df
ds
f(P(s+Δs))-f(P(s))
Δs
と定義できた。結果、 C(s) の接ベクトルを U として、df
ds
=Uf
となる。同じようにベクトル場 VC に沿った微分をdV
ds
V(P(s+Δs))-V(P(s))
Δs
と定義したいところだが、残念ながら、事はそう簡単ではない。 P(s) を点 PP(s+Δs) を点 Q として、V(P(s))VaP は接平面 TpM 上のベクトル、V(P(s+Δs))VaQTQM 上のベクトルとなり、 それぞれ属する空間が異なる。そのため、単純に両者の差をとることは意味をなさない。ユークリッド空間のように、三角定規を二つ組み合わせて、 VaQを点 P に平行移動して始点を合わせ、ベクトルの引き算をするわけにはいかないのである。 そこで、TpM から TQM に、内在的な『平行移動』でベクトルを移す写像を PC 、その逆写像を P-1C として、それがどのようなものであるべきかを考えていこう。内在的な曲面論 ━━ 平行移動ということ で見たように、内在的な『平行移動』は経路によるため、添え字に C をつけている。一旦、P-1C を定めることができてしまえば、V の点 P における C に沿った微分は
dV
ds
P-1C(VaQ)-VaP
Δs
で与えられる。
PC,P-1C は線形写像である
曲線 C 上の 2C(s), C(s+s1) をそれぞれ点 P,Q としよう。TQM のベクトルを TPM へ『平行移動』して戻す写像を P-1C(s1) とする。TQM におけるベクトルの和は、 P-1C(s1)TPM へ戻した先でもベクトルの和P-1C(s1)(V1+V2)=P-1C(s1)(V1)+P-1C(s1)(V2)であるべきなので、P-1C はベクトルについて、線形写像となる。進める写像 PC についても同様。したがって、座標基底 {
∂ui
}
についての写像が決まれば、P-1C(s1) は定まることになる。
すなわち、一般のベクトル V aQ=ViaQ
∂ui
aQ
P-1C(s1) で戻すと、座標成分はそのままに、
P-1C(s1)(ViaQ
∂ui
aQ)=ViaQP-1C(s1)(
∂ui
aQ) TPM
で与えられる。 では座標基底の『平行移動』はどうあるべきか、考察を進めていこう。
座標基底場の平行移動と共変微分
超曲面 M 上の(より正確には対象の座標系がカバーできる範囲における)各点 P で、それぞれ座標基底{
∂ui
}
を定義でき、接平面 TPM を張る。これを座標基底場と呼ぶ。
座標基底場の『平行移動』について、さらに条件を加えて、P,Q が近接している場合 ( s1=𝛥s ) を考えよう。 なお、U=Ui
∂ui
aP
P における曲線 C の接ベクトルとすると、座標表示で点 P の超曲面上の位置は (u1aP,..,unaP)(uiaP), Q(u1aP+U1𝛥s,..,unaP+Un𝛥s)(uiaP+Ui𝛥s) と表される。
𝛥s=0 の場合は『平行移動』と言っても移動していないため、元の基底と一致すべきで、恒等変換となる。P-1C(0)(
∂ui
aQ=P)=𝛿ki
∂uk
aP=
∂ui
aP
𝛥s が微小量の場合、一次までの近似をすると、 𝛤kij を各点に与えられた係数として
P-1C(𝛥s)(
∂ui
aQ)
=
∂ui
aP+𝛥sUj 𝛤kijaQ
∂uk
aP+O(𝛥s2)
=
∂ui
aP+𝛥sUj 𝛤kijaP
∂uk
aP+O(𝛥s2)
={𝛿ki+𝛥sUj 𝛤kijaP}
∂uk
aP+O(𝛥s2)
と表現できる。2 番目の等号について説明すると、P-1CTQM から TPM への写像なので、各点で定義される係数 𝛤kij は点 Q での値であるべきだが、これを点 P 周りで展開すると、 𝛤kijaQ=𝛤kijaP+𝛥sUl∂𝛤kij
∂ul
aP+O(𝛥s2)
となり、𝛤kijaQ の項はすでに 𝛥s の係数になっているので一次までの近似として 𝛤kijaPで置き換えていることによる。 こうして、TPM に属するもう一つのベクトル P-1C(𝛥s)(
∂ui
aQ)
が得られたので、TPM におけるベクトルの差、ひいては座標基底場の『微分』を考えることができる。
P-1C(𝛥s)(
∂ui
aQ)
の右辺第一項
∂ui
aP
を左辺に移行し、 1/𝛥s をかけ、𝛥s0 の極限をとると、
1
𝛥s
{P-1C(𝛥s)(
∂ui
aQ)-
∂ui
aP}=Uj 𝛤kijaP
∂uk
aP
Uj, 𝛤kij とも全て点 P での値で表すことができた。これを座標基底場の共変微分と呼び、U(
∂ui
)aP
と書き、ベクトルを値として与える。
U(
∂ui
)aPUj 𝛤kij
∂uk
aP
これを見ると、 は(曲線の)接ベクトルに関しても線形写像であることが分かる。a,bRとして
aU1+bU2 (
∂ui
)aP
=(aUj1+bUj2)𝛤kij
∂uk
aP
=aU1(
∂ui
)aP+bU2(
∂ui
)aP
特に接ベクトルが座標基底
∂uj
の場合、 脇の
∂uj
を単に j と略記することとし、点 P は曲線上任意の場所にとれるので aP も省略してしまうと
j(
∂ui
)= 𝛤kij
∂uk
が超曲面 M 上の任意の点で成り立つ。 このように、係数 𝛤kij は『平行移動』を介して、近接点の接空間における座標基底のつながり具合を表す量なので、接続係数と呼ばれる。 座標基底場の微小変位に対する『平行移動』と、共変微分が定義できたので、今度は基底以外のベクトルについて一般化しよう。以後、平行移動は内在的な『平行移動』を指すこととし、強調したい場合以外は『』は省く。
ベクトルの平行移動と共変微分
一般のベクトル V aQ=ViaQ
∂ui
aQ
P-1C(𝛥s) で戻したものは、座標成分はそのままで、座標基底のみを戻した、
P-1C(𝛥s)(ViaQ
∂ui
aQ)=ViaQP-1C(𝛥s)(
∂ui
aQ) TPM
であった。 成分の項を全て点 P での値で評価することを目指し、ViaQ を点 P 周りで展開するとViaQ=ViaP+𝛥sUl∂Vi
∂ul
aP+O(𝛥s2)
となるので、
P-1C(𝛥s)(ViaQ
∂ui
aQ)
=ViaQP-1C(𝛥s)(
∂ui
aQ)
=ViaQ{𝛿ki+𝛥sUj 𝛤kijaP}
∂uk
aP+O(𝛥s2)
={ViaP+𝛥sUl∂Vi
∂ul
aP}{𝛿ki+𝛥sUj 𝛤kijaP}
∂uk
aP+O(𝛥s2)
=ViaP
∂ui
aP+𝛥sUj{∂Vk
∂uj
aP+ViaP 𝛤kijaP}
∂uk
aP+O(𝛥s2)
これが VaQ TQMTPM に平行移動したベクトルである。予想通り、VaP に微小変位ベクトルを加えた形となっている。これで、TPM 上にもう一つのベクトル P-1C(𝛥s)(ViaQ
∂ui
aQ)
が得られたので、TPM におけるベクトルの差、ひいてはベクトルの『微分』を考えることができる。
右辺第一項を左辺に移行し、両辺に 1/𝛥s をかけ、 𝛥s0 の極限をとると、
1
𝛥s
{P-1C(𝛥s)(ViaQ
∂ui
aQ)-ViaP
∂ui
aP}
=Uj{∂Vk
∂uj
aP+ViaP 𝛤kijaP}
∂uk
aP
これをベクトルの共変微分と呼び、UVaP と書く。座標基底はもちろん、成分も全て点 P での値となった。これは TPM におけるベクトルの差のスカラー倍(の極限)なので、ベクトルの共変微分もまたベクトルであると考えられる。P は曲線上、任意の場所にとれるので aP も省略してしまうとUVUj{∂Vk
∂uj
+Vi 𝛤kij}
∂uk
となる。 逆に UV を用いて、極限を取る前の両ベクトルの差はP-1C(𝛥s)(ViaQ
∂ui
aQ)-ViaP
∂ui
aP=𝛥s UVaP +O(𝛥s2)
と表せる。 ベクトルの共変微分の式UVUj{∂Vk
∂uj
+Vi 𝛤kij}
∂uk
に戻り、右辺をもう少し詳しく見てみると、第 1 項は成分の変化分からの寄与、第 2 項は座標基底の変化分からの寄与の和となっている。もう一歩進めると、共変微分 U はライプニッツ則を満たすことを示すことができる。 スカラー場 f は基底を持たないので、共変微分を考える必要はないが、あえてスカラー場の共変微分 Uf を、その方向微分 Ufで定義することにすると、UfUf=(Uj
∂uj
)f
ベクトルの共変微分は
UV=Uj{∂Vk
∂uj
+Vi 𝛤kij}
∂uk
=(U(Vk))
∂uk
+Vi(U
∂ui
)
=(U(Vk))
∂uk
+Vk(U
∂uk
)
と書け、その成分と座標基底について、ライプニッツ則が成り立っていることが分かる。 ベクトルの共変微分もベクトルと考えられるということは、それは幾何学的実在、座標系によらないということが要請される。次はこの条件を調べよう。𝛤kij には奇妙な(座標)変換則が要求され、テンソル(の成分)ではない。
𝛤kijの変換則
ダッシュ系における座標基底間の共変微分をダッシュなし系の一般座標系に座標変換したものを考えると、
∂uj '
∂ui'
=∂u𝜈
∂uj '
∂u𝜈
∂u𝜇
∂ui'
∂u𝜇
=∂u𝜈
∂uj '
{
∂u𝜈
(∂u𝜌
∂ui'
)+∂u𝜇
∂ui'
𝛤𝜌𝜇𝜈}
∂u𝜌
={2u𝜌
∂uj '∂ui'
+∂u𝜈
∂uj '
∂u𝜇
∂ui'
𝛤𝜌𝜇𝜈}
∂u𝜌
𝛤k'i'j '
∂uk'
=𝛤k'i'j '∂u𝜌
∂uk'
∂u𝜌
これより𝛤k'i'j '∂u𝜌
∂uk'
=2u𝜌
∂uj '∂ui'
+∂u𝜈
∂uj '
∂u𝜇
∂ui'
𝛤𝜌𝜇𝜈
両辺に ∂ul'
∂u𝜌
(𝜌=1...n)
をかけて和をとると、Einstein の規約では以下のように簡潔に書けて
𝛤k'i'j '∂u𝜌
∂uk'
∂ul'
∂u𝜌
=(2u𝜌
∂uj '∂ui'
+∂u𝜈
∂uj '
∂u𝜇
∂ui'
𝛤𝜌𝜇𝜈)∂ul'
∂u𝜌
=𝛤k'i'j '𝛿l'k'
=𝛤l'i'j '
indexl' から k' に置き換えると
𝛤k'i'j '=(2u𝜌
∂uj '∂ui'
+∂u𝜈
∂uj '
∂u𝜇
∂ui'
𝛤𝜌𝜇𝜈)∂uk'
∂u𝜌
=∂u𝜇
∂ui'
∂u𝜈
∂uj '
∂uk'
∂u𝜌
𝛤𝜌𝜇𝜈+2u𝜌
∂uj '∂ui'
∂uk'
∂u𝜌
これが 𝛤kij の変換則である。これを見ると、 𝛤kija
1
2
型テンソルの変換則である第 1 項に余分な項が追加されていることがわかる。即ち、𝛤kij はテンソル(の成分)ではない。
進める方向の平行移動
この先、使うことになるので、P-1C(𝛥s) の逆変換 PC(𝛥s)、進める方向の平行移動も求めておこう。平行移動で進めたものを再び平行移動で戻したものは元のベクトルに戻るべきなので、P-1C(𝛥s) PC(𝛥s)=Iが成り立つ。 発見的な方法ではあるが、P-1C(𝛥s)(ViaQ
∂ui
aQ)={𝛿ki+𝛥sUj 𝛤kijaP}ViaQ
∂uk
aP+O(𝛥s2)
からの類推から、
PC(𝛥s)(VlaP
∂ul
aP)
XiaQ
∂ui
aQ
={𝛿il-𝛥sUm 𝛤ilmaP}VlaP
∂ui
aQ+O(𝛥s2)
を仮定して P-1C(𝛥s) PC(𝛥s) へ代入してみると、
P-1C(𝛥s)(XiaQ
∂ui
aQ)
={𝛿ki+𝛥sUj 𝛤kijaP}{𝛿il-𝛥sUm 𝛤ilmaP}VlaP
∂uk
aP+O(𝛥s2)
={𝛿ki𝛿il+𝛿il𝛥sUj 𝛤kijaP-𝛿ki𝛥sUm 𝛤ilmaP}VlaP
∂uk
aP+O(𝛥s2)
={𝛿kl+𝛥sUj 𝛤kljaP-𝛥sUm 𝛤klmaP}VlaP
∂uk
aP+O(𝛥s2)
=𝛿klVlaP
∂uk
aP+O(𝛥s2)
=VkaP
∂uk
aP+O(𝛥s2)
となり、𝛥s の一次の近似で正しいことがわかる。dummy index をそろえると
P-1C(𝛥s)(ViaQ
∂ui
aQ)
={𝛿ki+𝛥sUj 𝛤kijaP}ViaQ
∂uk
aP+O(𝛥s2)
PC(𝛥s)(ViaP
∂ui
aP)
={𝛿ki-𝛥sUj 𝛤kijaP}ViaP
∂uk
aQ+O(𝛥s2)
となる。
ベクトル場平行の方程式と測地線
超曲面の各点で定義されたベクトル場 V について、平行移動したベクトルが移動先のベクトルと一致するとき、すなわちP-1C(𝛥s)(ViaQ
∂ui
aQ)=ViaP
∂ui
aP
が曲線 C 上の各点(の接平面)で成り立つとき、 VC に沿って平行であるという。共変微分を用いてこれを書き表すと、 C 上の各点における接ベクトルを U としてUV=0C 上の各点(の接平面)で成り立つとき、 VC に沿って平行であるという。 平行であるかどうかを考える対象のベクトルとして、 曲線の接ベクトル U 自体を考えることもできる。UU=0C 上の各点(の接平面)で成り立つとき、接ベクトル U は曲線 C 自身に沿って平行となる。逆の見方をすると、ある点 P の接平面にある任意のベクトル U を、それ自身の方向に平行移動していくことで得られる曲線が存在するということである(具体的には、この微分方程式に初期条件を与えることで、解曲線がただ一つ定まる)。これをユークリッド空間の場合で考えると、言うまでもなく、それは直線となる。あるルールで接平面間の平行移動を定めたとき、この解曲線は超曲面における『直線』に相当する特別な曲線となるので、これを測地線と名づけよう。 座標系を入れた時の接ベクトルの定義Udui
ds
∂ui
を代入してみると、
UU=Uj{∂Uk
∂uj
+Ui 𝛤kij}
∂uk
=duj
ds
{
∂uj
(duk
ds
)+dui
ds
𝛤kij}
∂uk
={d2uk
ds2
+duj
ds
dui
ds
𝛤kij}
∂uk
=0
これを測地線の方程式と言う。 ここでもう一度、繰り返し強調しておきいのは、測地線の方程式 UU=0 は超曲面上の各点での接平面におけるベクトルの方程式であり、得られる解 U もまた各接平面に属するベクトルであるということ。一方で、同じことではあるが、d2uk
ds2
+duj
ds
dui
ds
𝛤kij=0
に初期条件 (uk)aP ,(duk
ds
)aP
を与えて得られる解 (uk(s)) は接平面ではなく、超曲面上の座標系における曲線の成分表示となるということである。
関連して、UaPΔs =duk
ds
aPΔs
∂uk
aP
基底を省略して成分のみで表すと(duk
ds
aPΔs)
TPM 上のベクトル、(ukaP+ΔsUkaP)=(ukaP+Δsduk
ds
aP)
は超曲面上にある点の座標成分、ひいてはその点を表していることにも注意しよう。ベクトルの終端と、この点が一致するのは 𝛥s0 の極限を取った場合のみである。 関連して、本チャプターの ベクトルの平行移動と共変微分 では、ベクトルの成分 ViaQ を点 P 周りでテイラー展開していたが、これもこのまま議論を進めて問題ないのかと心配になってくる。これは Viを値に持つスカラー場 f(s)=Vi(s) のテイラー展開と考えれば問題ないことがわかるだろう。
共変微分の成分に関する記法について
座標基底の共変微分のときと同様、曲線の接ベクトル Ul 方向の単位ベクトル
∂ul
=𝛿jl
∂uj
である場合、Ul と書く。
lV=𝛿jl{∂Vk
∂uj
+Vi 𝛤kij}
∂uk
={∂Vk
∂ul
+Vi 𝛤kil}
∂uk
本来、ベクトルは基底まで含めてベクトルだが、基底を省いて成分だけで議論を進めることも多い。その場合、lVk 成分を Vk;l と略記する。Vk;l(lV)k=∂Vk
∂ul
+Vi 𝛤kil
また、Vk;l のセミコロンに対応して、単に Vkul で偏微分したものを Vk,l とコロンで書く。Vk,l∂Vk
∂ul
こうすると、lVk 成分はVk;l∂Vk
∂ul
+Vi 𝛤kil=Vk,l+Vi 𝛤kil
と書ける。この時、UVk 成分は、U に対する線形性を思い出すと
(UV)k=(UjjV)k
=Uj(∂Vk
∂uj
+Vi 𝛤kij)
=UjVk;j
となる。この表記法のよいところは、共変微分の成分について、 ・先頭の Uj は経路 C の接ベクトル U についての情報のみからなり、平行移動したいベクトル V にはよらない、つまり平行移動したいベクトルとは独立に決まり、その影響は受けない一方で、・続く Vk;j V についての情報のみからなり、経路 C にはよらない、つまり経路とは独立に決まり、その影響は受けない という構造となっており、綺麗に経路 C 由来とベクトル V 由来に分離されることを明確に示してくれることである。
補足
その 1:座標系間の 𝛤kij の変換則を示しはしたが、これは変換則であって、この情報だけから 𝛤kij が求まるわけではないことに注意。少なくとも、ある一つの座標系について、 𝛤kij を別の手段で決めてやらねばならない。それを決めるのは接平面間の『平行移動』のルール、何をもって平行移動とするか?である。ルールが変われば、その値のセットも変わってくる。 逆に、『平行移動』のルールを適切に定めてやれば、𝛤kij は一意的に決定される。ベクトル間の内積が定義される、リーマン幾何学のチャプターで、その具体例 Levi-Civita (レビーチビタ)接続を説明する予定。 なお、ベクトル間の内積が定義されていれない空間でも、空間の歪み具合を示す曲率テンソルを定義することができるということを強調したいので、リーマン幾何学のチャプターまでは、このままベクトル間の内積を前提とせずに議論を進める。 その 2:教科書によって、 𝛤kij の下付き添え字の役割が逆となっているものも結構ある。本の最初の方に明示されているはずなので、確認するようにしてほしい。実は一般相対論においても採用される Levi-Civita 接続は、下付き添え字の対称性𝛤kij=𝛤kjiを持つので、それほど神経質にならなくてもよいのだが、ここでも、添え字の順序はSchutz: "A First Course in General Relativity" に習っている。一般相対論においては、この対称性は、任意の点で局所慣性系をとることができるという要請から導出されることを第二部でお話しする。 もう少しだけ補足すると、 Levi-Civita 接続では捩率なしを要請することで、下付き添え字の対称性が満たされることになる。詳しい説明抜きで捩率テンソル T の式だけ書いておくと、T(X,Y)XY-YX-[X,Y]=0となる。なかなかイメージが掴みづらいことと、上述したように、相対論では局所慣性系の要請から対称性は得られるので、ここではこれ以上、深入りはしないことにする。 以上、2 点を補足しておく。 共変微分はベクトルだけでなく、 1-form やテンソルにも拡張できる。こちらも平行移動の観点から導出していくと、それらの共変微分も、自然とライプニッツ則を満たすことが示される。

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